棚からひと掴み

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 クラシックギターに村治佳織がいるように、ハープにも竹松舞というアイドルが誕生しています。彼女のファースト・アルバム「ファイヤーダンス」に収録されているデビット・ワトキンス作曲のタイトル曲「ファイヤーダンス」を最初に聴いたのは19世紀ギターによる二重奏でした。
 舞さんがデビューするずっと前から、私には一人のアイドルがいます。彼女の名前はエリザベト・フォンタン。小柄で、華奢で、しわくちゃで…、そう、彼女は御年・ん十歳のお婆様です。初めて聴いたのは京都バロックザールで行われたコンサートでした。ステージに出てくる時なんか今にも倒れそうで…(失礼)、倒れたらそのままいっていまいそうで…(またまた失礼)。けれど、演奏が始まった途端その小さな手から生まれる音楽は私を圧倒しました。小柄な彼女のどこにそんなパワーがあるのか、途絶えることない音楽の波にただただ感動していました。そして、今回紹介するCDは、そのコンサートのライブ録音です。録音環境が整っていない等の理由でライブ録音を嫌う方もいますが、このCDはあの時の感動を克明に呼び起こしてくれます。

エリザベト・フォンタン京都リサイタル FMC-5026
1. 森の泉へ (トゥルニエ)
2. 即興曲 (ルーセル)
3. ハープ協奏曲 (ヘンデル)
4. シシリアーナ (レスピーギ)
5. ソナタ (デュシェック)
6. 即興曲 (フォーレ)
7. 塔のなかの王妃 (フォーレ)
8. 即興奇想曲 (ピエルネ)
9. 踊り子ロリータ (トゥルニエ)
10.セレナーデ (パリッシュアルバース)
11.無言歌 (フォーレ)


最初に紹介するCDは19世紀ギター・ディスコグラフティでも取り上げた福田進一氏の一枚。
エドゥアルド・フェルナンデス氏とのデュオなんだけど、トップギタリストの共演は期待以上の素晴らしさ!
ジョン&ブリームにギターの美しさを感じたのに対して、福田&フェルナンデスはギターの楽しさを教えてくれます。21世紀のギターデュオといったところでしょうか。
クラシックギターのスタンダードなナンバーから現代曲まで、バラエティ豊かな選曲ですが、やはり圧巻はタイトル曲の「アトム・ハーツ・クラブ・デュオ」どこかで聞いたような曲名は、ビートルズやピンク・フロイドから採ったもの。4楽章からなるこの曲をダイナミックに、遊び心たっぷりに聴かせてくれます。
クラシックギターを聴いたことのない方にも絶対楽しめる1枚です。

■アトム・ハーツ・クラブ・デュオ(福田進一&エドゥアルド・フェルナンデス) DENON COCQ-83079
1.アトム・ハーツ・クラブ・デュオ(吉松隆) 
2.「どろぼうかささぎ」序曲(ロッシーニ/ジュリアーニ編) 
3.トナディーリャ(ロドリーゴ) 
4.アダージョとアレグロ〜ロンドン交響曲第1楽章(ハイドン/カルッリ編) 
5.ロシアの想い出(ソル) 
6.入江のざわめき〜「旅の思いで」より(アルベニス/リョベート編) 
7.エボカシオン〜組曲「イベリア」より(アルベニス/リョベート編) 
8.カスティーリャ(セギティーリャス)〜スペイン組曲より(アルベニス/リョベート編) 
9.ヒロシマという名の少年(武満徹)