19世紀ギターって?

● どんな時代のギター?
19世紀ギターと呼んでいるのはどうも日本だけのようで、世界的にはロマンティック(ロマン派)ギターと呼ばれています。ロマン派(前期)は、シューベルト(1797年〜1828年)やショパン(1810年〜1849年)らが活躍した時代で、その頃、ギターは黄金時代を迎えました。ギターの作曲家では、ソル(1778年〜1839年)やアグアド(1784年〜1849年)らが活躍した時代です。ですから19世紀ギターは、19世紀全般ではなく1820年代を中心に1850年代あたりまでのギターを指します。ロンドンのパノルモ、パリのラコート、そしてウィーンのシュタファーが知られていますが、その他にも優れた銘器が多く存在します。この時代はまさにギターの宝庫といってよいでしょう。スペインのトーレスも19世紀に活躍しているのですが、19世紀ギターの範疇からは外れます。

● 19世紀ギターと現代のクラシックギターの違いって?
最近まで現代のクラシックギター(以下:モダンギター)から見ると、19世紀ギターは音量のない稚拙な楽器と見られていましたが、19世紀ギターについて知られるにつれてその認識が間違いであることも知られてきました。
モダンギターと19世紀ギターを優劣で比較することは意味がありません。モダンギターと19世紀ギターとのそれぞれの違いを味わって下さい。参考に、19世紀ギターコレクションにあるラコートとモダンギターとの外観の比較を挙げてみます。

項目 ラコート モダンギター
弦長 628mm 約650mm
全長 916mm 約970mm
胴長 435mm 約480mm
胴幅(短) 230mm 約280mm
胴幅(長) 298mm 約365mm
重量 約800g(推定) 約2.3kg

外観がこれだけ違うのですから、内部構造もモダンギターとは異なります。モダンギターと同じような扇状の力木を配置したパノルモを除いて、19世紀ギターはほとんど数本の力木により響きを創っています。構造がシンプルなだけにバランスを取るのは緻密になります。

● 19世紀ギターの魅力は?
では、19世紀ギターの魅力とはなんでしょう?
最初に19世紀ギター(ルイ・パノルモ:1828年)を弾いた時はショックでした。素直な澄み通った高音の美しさ、楽器全体で奏でる響きは、一音で私を魅了しました。この小さな楽器が演奏会で十分使えることを知るとますます好きになり、そして、多くの19世紀ギターの、それぞれの違いと素晴らしさを知りました。
一般でも、19世紀ギターのオリジナルやレプリカを用いたCDが相次いで出されたり、19世紀ギターでのコンサートが多く催されています。
ここでは、私が感じている魅力を簡潔に箇条書きにしてみました。また、音待人さんの江戸時代のギターに、19世紀ギターに接した人達の感想(賛否を含めてなかなか興味深いです)が列挙されています。